大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)514号 判決

被告人 川村隆一郎

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点。

所論は刑法第二百三十八条の暴行とは同法第二百三十六条の暴行と同様相手方の反抗を抑圧するに足るべきものでなければならないが、被告人が越後金明に対して加えた暴行は右の程度に達していないから、被告人の原判示二の所為をもつて準強盗罪に問擬した原判決は、事実を誤認したか又は法令の解釈適用を誤つたものであると主張する。よつてこの点について検討するに、刑法第二百三十八条の暴行は同法第二百三十六条の暴行と同様相手方の反抗を抑圧するに足るべきものでなければならないことは所論のとおりであるけれども、そのことを更に詳言すれば社会通念上一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであるかどうかという客観的基準によつて決すべきであつて、具体的事案において現実に相手方が反抗を抑圧されたかどうかによつて決せられるものでないことはいうまでもない(昭和二十四年二月八日最高裁判所第二小法廷判決参照)ところ原判決挙示の証拠によれば被告人は原判示の如く越後金明に対し腹部を足蹴にし或いは手拳で顔面を殴打する等の暴行を加えたことを認めるに十分であり、しかも同人に対し全治三週間を要した左顔面打撲傷、左側鼓膜炎の傷害を負わせたことも明らかであるから、右殴打の程度も極めて著しいことが認められ、右程度の暴行は社会通念上一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることについては何らの疑点もない。しからば原判決には何ら所論のような事実誤認も法令適用の誤もない。論旨は理由がない。

同第二点。

所論は原判決は原判示二の事実に関し、被告人の暴行が相手方の反抗を抑圧するに足るべきものである旨の判示を欠くから理由にくいちがいがあると主張する。

しかし準強盗における暴行の点の判示は一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行と認められる程度に具体的に示せば足り、特に相手方の反抗を抑圧した旨を認定判示したり、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行である所以を説明したりする必要は毫も存しないものと解すべきである。そして被告人の暴行が一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることは原判文によつて明かであるから、原判決は理由にくいちがいがあるとの所論も亦採用し難く、論旨は理由がない。

(坂井 山本長 荒川)

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